悪霊が取り憑いていた頃の話

文字数: 1922

僕はそれまでは普通に神様のことを信じていたし、本当にいると思っていた。今ももちろん死後の世界は信じていますが。

小中学はよくお祈りをしていていました。悪霊に取り憑かれないように、心身共に切磋琢磨していこうと思っていて。

小さいころのぼくは本当にいい子でした。周りの人全員が幸せになってほしいと思っていた。
道ですれ違う知らない他人でさえ、何かここをすれ違ったのは縁があるのかもしれないと、本気で思っていました。
僕の周りに起こること全てに
意味があるのなら、当然のことだからです。
だから全員が幸せになってほしいと思っていました。

……………

実は守護霊の声が聞こえるんです。
もう3年前にお別れをしたんですけどね。
最近は、全然。

3年前のぼくは周りから見ても控えめにいっておかしい人だったと思います。
肌に突然じんましんができたり、電車で突然発狂してしまったこともあります。

僕の耳元の悪霊が、毎日「狂え」とか「死ね」だとかそんなことを言っていました。書いている今だって思い出したくない。

それもそのはず、高校3年の頃の僕はもう、今耳元で囁いてくるこの”何か”がはたして守護霊なのか悪霊なのか区別がつかなくなってしまっていたんです。

小中の僕は今まで、耳元で囁いてくるこれを悪霊なのか守護霊なのかを”判別”していました。

最初は簡単なやり取りでした。
友人のちょっとした裏切りから囁かれた「死ね」という言葉。これは悪霊。「許したほうがいい」これは守護霊。こんな感じでよくある財布を交番に届ける際の天使と悪魔の茶番を、
日常的に、毎日、毎日、繰り返していました。

でもこれが段々と加速していって、中学3年生の後期には、より高度で難しいものへと変貌しつつありました。

恐ろしいことに今度は最初から、悪霊は僕の味方になろうとしてきたのです!守護霊と同じような発言をしてくる”彼”をいつのまにか信じるようになり、彼も力を貸してくれるようになっていました。
彼は、僕にスピーチのやり方を教えてくれたり、練習のために、まずはヒトラーの演説を動画で何度も見ろと言われて、その通りにしました。それが楽しくて仕方なかったんです。聞いてるとかっこよくて、鳥肌がたってきて。
ものすごい合唱コンクールを聴いたときにでる鳥肌に似たようなものを感じていました。
(厳密に言えばこの頃にはもう、守護霊と悪霊の境界はなくなっていたと書いていてわかった。)

その次に、悪霊の彼は、学級委員を決める際に、これを大川隆法のスピーチのやり方を混ぜてなんとかできないかと言ってきました。
その時の僕はほんとうに未熟で、愚かでした。
耳元で囁かれたことばに対して、興味とワクワクで突っ走ってしまったのです。

僕はクラス内男子全員をスピーチでヒロイックな気持ちにさせた後、男子全員を学級委員に立候補させるように仕向けました。その後悪霊は、ユダヤ人のような敵を作れとアドバイスしてきたのです。
僕はその通りに、クラスの男子のせいでクラスの雰囲気が悪くなっていると大川隆法のスピーチを真似て言いました。クラス男子は自分に票を入れて、クラスの女はほとんど僕に票を入れる結果になりました。

正直、僕に興味があったのは学級委員になることではなく、人との関係だとそのとき気づきました。そして、この経験から、僕は宗教や宗教を毛嫌いする人たちも皆同じだと思うようになりました。そしてそれは宗教そのものを尊敬するとともに、真剣に侮蔑した両極端な自分が現れました。

そうだ…悪霊がもし存在しなかったら、全てこの
最悪な自分も自分で生み出しているのか。全てが自分から出た錆なら、もうやっていけないよ。

いや、違うよ、ともだちだとも。悪霊は存在しないと、神様は存在しないよ。君が神様を裏切ってはダメじゃないか。
なるほど、悪霊は確かに存在するのか。
じゃあお前は一体誰なんだい?君は悪霊か?
それとも守護霊なの?違うよ。これは心理的現象じゃないか。自分の頭の中で今考えていることに過ぎないよ。じゃあ、神様は存在しないじゃないか!全部俺のせいだ!あ、なるほど。こうやって俺の気を狂わすお前は悪霊だな!
悪霊は立ち去れよ!
おい、大丈夫か!ともだちだとも!気を確かに持たないとダメじゃないか!
大丈夫落ち着いて。まずは深呼吸だ。
そう。よし。大丈夫だ。落ち着いてきた。
吸って、吐いて。

お前はだれ?

本当に恐ろしい話だよ。

思い出した。子供のころ、早口言葉の
「坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」が恐ろしすぎて夜も眠れなかったんだ。