「闇の自己啓発」を読んだ雑感 客観的につまらない。

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闇の自己啓発」という本のレビューを頼まれたのだが、久しぶりに読書で退屈さを感じてしまった。
本書の内容は、著者4人が行った読書会の文字起こしなのだが、読書会の課題図書となった本の紹介から始まり、関連分野の本や思想家の話が繰り広げられる。無論、各章で様々な内容の本が取り上げられるため、人によっては面白いと感じる話題もあるかもしれない。しかし、読書会及び座談会という形式ゆえに話が脱線することも多く、どの章も全体的なまとまりを欠いている印象は否めなかった。

出版元の早川書房のサイトでは、

現代思想やインターネットの最深部を駆けめぐり、未知なる事物に出会うとき、私たちの世界観・人生観は一変する!(Hayakawa Onlieより引用)

と紹介されていた本書だが、少なくとも私の場合は世界観も人生観も一変しなかった。有り体に言えば、本書では現代思想やインターネットの話題は幅広く網羅されていたが、専門家や当事者がそれらのトピックを解説するわけではなく、あくまで著者4人が課題図書の感想を述べたり内容を紹介したりすることが中心だった。そのため、思考実験として面白い議論はあっても、価値観を根本から揺さぶられるような議論はなかなか見当たらなかったのだ。
本書と同じくnoteの記事がベースとなった書籍でも、御田寺圭氏の「矛盾社会序説」の方がを感じたし、沼田和也氏の「牧師、閉鎖病棟に入る。」の方が人生観・世界観について深く考えさせられた。これら2冊と比べると、本書は扱った分野が広すぎるため、(まえがきを読んでもなお)全章に通底する具体的なテーマを感じ取るのが難しかった。

加えて、本書がターゲットとする読者層も、やや不明瞭だったのではないだろうか。
現代思想、文学、インターネット、テクノロジーなどの幅広い話題を扱っているものの、専門用語と脚注が非常に多く、現代思想等に疎い私は読み進めるのに苦労した。一方で、本書に書かれている内容がスラスラと理解できるような人であれば、本書自体は読まずに、取り上げられた課題図書や脚注で使われた参考文献を読んだ方が、より多くのことを手っ取り早く学べるだろう。すなわち、本書は「素人には難しすぎるし、知識のある人にはあまり必要ない」という中途半端な位置づけにならざるをえない。とはいえ、現代思想やインターネットの最先端について知りたいと思う人が、有益な文献を探す手がかりにはなるだろう。

まとめると、
・取り上げられているトピックが広範囲すぎること
・本全体の内容にまとまりが欠けていること
・ターゲットとしている読者層が不明瞭であること
などが欠点であるものの、現代思想などの紹介としては興味深い部分も多い一冊だった。
興味のある章を読み、そこで取り上げられている文献に手を伸ばす…というのが、本書の有効な用途だろう。