新春メディア放談2022

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ラビット「2021年は一年延期のオリンピックがTOKYO2020と称されて行われたように、時間が2020年のまま静止し、慣例化したコロナ禍によって、空間もまた制限された凪の年だったわけだが、その凪を危機と捉えるか好機と捉えるかで明暗が分かれることが、メディアのレベルでもはっきりと可視化された一年だった」

ふわぽへ「渋谷凪咲が『ワイドナショー』で話してたんだけど、これまで声が小さくて大人数の中に入れなかった彼女は、コロナ禍で番組の人数が減ったおかげで、すごく活躍できるようになったと。パス回しの上手いみちょぱや指原とも、がむしゃらにゴールへと突き進む朝日奈央とも違って、笑顔で飄々とシュートを決めていく彼女の花を咲かせたのは、本人の言う通り、コロナ禍のもたらした凪によるところが大きかった」

ぱんだ「うーん、なるほど。確かに渋谷凪咲は面白いんだけど、ただ彼女はあまりに完璧過ぎるというか…。常に100点を出すのは当たり前って感じで、僕としてはもっと予想外な爆発力のある笑いが見たいなと思ってしまうんよね」

ふわぽへ「『クイズ!鼻からスイカ』でフットボールアワーの後籐が一回ネタを振った後、その回答のウケが少し弱かったので「渋谷、もう一個行こうか!」とよりパンチのある回答を引き出そうとしてたんだけど、確かに彼女はお笑い東大王の役割を期待されてるよね。『100%アピールちゃん』の24時間大喜利も100点とるのは当たり前だという前提で進む企画だったし」

ぱんだ「そう。渋谷凪咲は優等生過ぎるのが僕としては唯一の不満。実力は認めるけど」

ラビット「昨年は小山田圭吾と小林賢太郎の解任に、DaiGoホームレス炎上、樋口恭介へのSNS上での死刑宣告もあり、社会やネットの空気が全体的にギスギスしていたから、テレビ業界においても手堅い得点王を求めるところはあったかもしれない」

ふわぽへ「紅白歌合戦がオリンピック演出の延長で、SDGsやLGBT、障害者パフォーマー、ドラクエ鬼滅エヴァと多様性を表現しようとして、本当の2021年の顔が『CDTV ライブ!ライブ!』や『ももいろ歌合戦』に流れる裏で大滑りしていたのも、全方面から怒られないようにと守りに入ったからな気もする」

古田「何度も何度もYOASOBIやエヴァで若手(笑)だし、ガキ使も終わったし、良くも悪くもテレビの時代は終わったね」

ぱんだ「安定感は抜群だけど万年二番手だった麒麟の川島の起用が増えたのもそうした背景がある気がする」

ふわぽへ「川島といえば『ラヴィット!』が朝の情報番組でありながら、クイズの皮を被った大喜利番組として、お笑いファンの注目を集めたけど、制限の中で工夫して戦う大喜利的な想像力が一つ昨年の鍵だったね」

古田「孤独のグルメ的な想像力。日常を楽しむ目線を持った陰キャやニートの方がコロナ禍においては精神的に安定してるってこと」(PCでビッグニートの動画を見せながら)

ウ「ビッグニートでかすぎんだろ(笑)」

ラビット「大喜利力に定評のある渋谷凪咲や麒麟の川島はまさに、ゲームとして制約と戯れる大喜利的な想像力によって、コロナ禍二年目のデスゲームを見事サヴァイヴした」

ふわぽへ「プレイヤーの目線ではそういうことになる。ただ視聴者の目線では、リアルなもの、着飾らない自然体への欲望が加熱した年だったと思う」

ぱんだ「ヒコロヒーのブレイクとかはそうかも」

ふわぽへ「ヒコロヒーが日向坂46の齊藤京子とやってる『キョコロヒー』はまさに二人の飾らなさがウケた。ぱいぱいでか美が「令和の『下妻物語』なんだ」って形容していた通り、ローテンションで媚びない二人の親しみやすさとどこか噛み合わなさ、シスターフッド的な空気が唯一無二の魅力になってる。この番組のプロデューサーは『マツコ&有吉の怒り新党』にも携わってた舟橋政宏なんだけど、彼は『街録』や『考えすぎちゃん』、トマホークといったここ最近のインタビュー系番組の源流ともいえる『激レアさんを連れてきた』も担当してる」

ぱんだ「かつて上岡龍太郎が「テレビで面白いのは、素人が芸をやるか、玄人が私生活を見せるか、2つに1つだ」と言ってたけど、今は素人も玄人も関係なく私生活そのものがコンテンツになってる感じか」

古田「ぱんださん良いこと言ってて、俺たちが生きてる時代っていうのは、トゥルーマン・ショーそのものなわけ。TwitterもYouTubeも全部フィクション」

橘玲「現代はある意味プロというものが消滅した。『浅草キッド』や『志村けんとドリフの大爆笑物語』は、閉鎖的なコミュニティのなかで師匠が弟子に知や芸を伝え、苦楽を共にしながら成長していくという「夢」が見られた最後の時代の物語だった」

ふわぽへ「NSC一期生のダウンタウンが師匠を介さなくとも己の身一本で成り上がれると証明したことでお笑いは民主化されたからね。宇野ちゃん的にはネオリベ化してサヴァイヴ系になったとも言えるが」

橘玲「才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア」

静「あっ、トゥルーマン・ショーで思い出したんですが、ふわぽへさんの山下美月のブログ面白かったので、勝手にAI音読化しました」

ふわぽへ「その節はありがとうございます」

橘玲「無理ゲーsh…」

古田「あれ最初読んだときはふわぽへのブログランキングでは下の方だったんだけど、AI音読化されたことで静くんの話なんだと分かった」

ダニエル「橘玲むちゃくちゃ弱い(笑)」

ウ「ほんとそれな(笑)」

一同「(爆笑)」

ふわぽへ「『キョコロヒー』の成功を受けて、ハマ・オカモトが自分を語りたがらない齋藤飛鳥の内面に迫る『ハマスカ放送部』が始まったのも象徴的で、あのちゃんの活躍もそうだけど、2022年のキーワードは自然体になるかもしれない」

ラビット「かつて荻上チキが『社会的な身体』の中で、個々人がキャラを求められる社会における参照モデルとして一発屋芸人がいると述べていたが、もう一発屋ブームは終わった。ただ逆を返せばYouTubeやTikTok、Twitterには一発屋しかいなくて、誰もがSNSへと容易に接続できるようになり、キャラ芸人として振る舞うのが当たり前になったから、彼らは必要なくなったのではないか」

ふわぽへ「2021年は評価経済のバブルが弾けてHIKAKINやDaiGoが消える一方で、アイドルと芸人は依然として溢れかえった年だったけど、全てが虚構に覆われた反動として、自然体を求める流れができつつあるのかもしれない

古田「齋藤飛鳥はひろゆきを超えた。個性経済学の時代。清水はるやウ、ダニエルの時代が来る。これふわぽへにも朗報な話かもしれない」

ふわぽへ「そう。成田悠輔のような本物が出てきて、ひろゆきブームも終わりつつあるし、私をいかに表現するかが重要になる。その点でテレ東の番組作りには注目していて、『TVチャンピオン』や『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』、『YOUは何しに日本へ?』や『家、ついて行ってイイですか?』、昨年では『乃木坂に、越されました』や『Re:Hack』のような、全てが台本通りにはいかない、起こるかも分からない偶然性の面白さに向かって突き進む番組にヒントがありそうな気がしてる」

ぱんだ「テレ東の手法は『ポツンと一軒家』や『ヒューマングルメンタリー オモウマイ店』など他局の番組にも広がってるしね」

ラビット「ニコ生的、へずまりゅう的な想像力。YouTuberブームの後はニコ生の時代へと回帰するかもしれない。へずまりゅうもニコ生によくいる迷惑配信者のロジックを使って評価経済をぶっ壊したパワータイプの不謹慎系だし」

ぱんだ「ニコ生はあまり分からないんですが、僕が渋谷凪咲に物足りなさを感じる理由もそれで、どこか事故的な笑いを期待してしまうんですよね。とんねるず好きですし。あっ、へずまりゅうは僕もハマってました」

ふわぽへ「へずまりゅうがウケた理由に、多かれ少なかれ演技の入ってるYouTuberの素の顔を暴く面白さってのは確かにあったし、全てが虚構であるがゆえにみんな「リアルさ」に触れて安心したいのかもしれない。Z世代には広告らしくない広告でないと届かないという話があるけど、そう考えるとへずっ子のヤラセへの怒りもかなり本気なんじゃないかと思ってきた」

古田「不謹慎系で言えば、天皇制を価値相対化し、最大のPV数を獲得した小室圭こそが2021年最大の批評だった」

おわり「天皇制なんて、日本なんてどうなってもいい、眞子との関係の方が大切なんだ!と、二度も原爆を落としたにも関わらず、戦後は天皇制に続く新たな国体となったアメリカへと飛び立った小室圭は、本物の暗黒啓蒙でありセカイ系。この騒動の顛末は『天気の子』そのもので、降り注ぐ血の雨によって、やさしい世界・ニッポンは水没した。自然体だの「リアルさ」だのを求める大衆の愚劣な欲望は、僕からしてみればそうした現実から目を背けるための逃避行為にしか思えないね」

ふわぽへ「それは一理ある。ただいかに私を操作するかのセルフプロデュース力によって生きやすさが変わるのは事実なので、その点で村上春樹、舞城王太郎、齋藤飛鳥を読む意味はあると思う」

おわり「文学を読め、空っぽ野郎が。ってことだね」

ふわぽへ「そう」

おわり「って、なんか話がまとまりそうな雰囲気になってきたけど、忘れてることない?ほら、昨年消されたあのお方」

古田「そう樋口恭介。彼についてふわぽへはどう思う?」

ふわぽへ「彼は少しお調子者で不憫ないじめられっ子って感じがあるね。冷静に考えて彼は別段悪いことをしたわけじゃない。彼の考えた企画は入手困難な絶版本を想像だけでレビューするってだけのもので、ニューウェーブSFやラテンアメリカ文学辺りがやってそうなアイデアで新規性が感じられないのはともかく、炎上するほどのものではない。多くの絶版本の権利を握っている早川書房でそんな企画を立てることが不謹慎だという怒りの声があったが、なら責められるべきは樋口よりも早川書房の方だろう」

古田「彼は早川書房にあっさりと切り捨てられた」

ふわぽへ「それ自体はビジネスが絡むので仕方ないにしても、周辺の編集者や木澤さえ助けに来ない。DaiGoにはひろゆきや青汁王子が打算ありとはいえコラボしてくれたが、樋口は完全に黙殺された。ただこれ対岸の火事では済みませんよ。人々が腹に抱いていた怨念が樋口恭介というスケープゴートに向かっただけで、本丸は早川や木澤および闇の自己啓発。前々から僕はハヤカワ絡みで炎上が起きると予測していたが、その流れは今年も止まらないでしょうね。次はあなたの番です」

古田「生贄は必要でしょ」(斗司夫モノマネ)

一同「(爆笑)」

ラビット「人間がどんどん死んでく。ヤバい。崩壊する。世界は。になりそうですね。リアルに」

ふわぽへ「未来は創造するものではなく想像を絶するものである。だけど僕らは元気です!✊」