文春砲の2016年、潔癖社会前夜の汚い徒花

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2021年11月24日放送の『水曜日のダウンタウン』での深さ3mの落とし穴に芸人を放置するドッキリ企画「落とし穴に落ちたのに一向にネタばらしが来ないまま日が暮れたら正気じゃいられない説」が炎上していたが、2016年まで放送されていた関西ローカルの深夜番組『ごきげん!ブランニュ』では、このレベルの鬼畜企画は毎週のように放送されていた。今回はその中でも特に印象的だった企画をいくつか紹介しよう。

まず思い出すのが「ラーメン全国制覇の旅」である。これは芸人のガリガリガリクソンが、すごろくで出た目の数だけ駅を進んで、駅の周りのラーメン屋を探して食べに行くいうシンプルな企画だが、ここで酷いのが制限時間が設けられていて、ダッシュでラーメン屋を探さなければならない点だ。

一駅目ならまだ良いが、何杯かラーメンを食べた後に走り回るのは、デブのガリクソンにはかなり堪えるだろう。大食いと体力の両方を交互に求められる、身体を破壊しにかかっているとしか思えない鬼畜企画だった。

そんなラーメンすごろくで殺しにかかった後のガリクソンに待つのがダイエット企画「一週間〇〇生活」で、これはガリとガーリックなど、とても主食にはならない食材だけで一週間過ごして貰うというものだ。

もちろん毎日そのまま食べるのは厳しいので、肉や米に見た目や食感を似せるなど調理に工夫を凝らすのだが、結局は耐えられなくなり、おかしくなってゴネるのが恒例となっていた。

特に印象的だったのが、着衣のままお湯を張っていない湯船でシャワーを浴びて発狂するシーンで、とんでもないものを見せられているなと思ったものだ。

なお終わった後は肉やら寿司やら食べたいものを好きなだけ食べているので、偏食と爆食を繰り返させて、余計に身体を破壊している気がしてならない。

ガリクソン以外の企画も紹介しておこう。「24時間ドミノ」は『水曜日のダウンタウン』でクロちゃんもやらされたドミノ企画だが、成功したら準レギュラーへ昇格してあげますよとご褒美を用意することで、挑戦する三人の若手芸人に緊張感を持たせている。

その結果、順調にドミノを並べたところで失敗すれば先輩後輩関係なくガチギレで喧嘩するなど、建前の壊れた人間と人間がぶつかり合いが繰り広げられていた。

これらは人間のむき出しの姿を映すという意味で、悪趣味サブカルの残り香が漂う企画で、今では考えれられないが、10年代前半まではそういう空気がギリギリテレビの中に残っていた。

風向きが大きく変わり始めたのが2016年で、この年は川谷絵音とベッキーのゲス不倫がメディアを騒がせ、それをすっぱ抜いた週刊文春が文春砲と担ぎ上げられた。あくまで個人的な感想だが、社会の空気が急速に偽善化・潔癖症化していったのを覚えている。

まさにその年に番組が終了したのは、関西ローカルとはいえ、そうした変化を象徴する出来事だったようにも思える。

もしそうであるなら、時代から逃げ切るような形で終了を迎えることができたのは結果的に賢明な幕引きだったと言えるのかもしれない。