財政政策は何故重要なのか

国債発行による財政支出拡大は、今最も必要な政策だろう。消費税を減税して景気を刺激し、自粛せざるを得ない事業者に補償を行うなど、何十兆円もかけて行うべきだ。
一般的な経済学でも、不況時の財政出動や減税はスタンダードな対策とされているが、これは好況時の緊縮財政とセットで語られることが多い。
しかしながら、私は好況時であっても財政支出を削減することには反対である。無論、好況時にわざわざ大幅な支出拡大を行うのもダメなのだが、財政支出や税制とは単なる景気の調整弁ではなく、より重要な意味を持つものなのだ。

例えば、近年注目を集めるMMT(現代貨幣理論)では、貨幣とは社会的資源を動かすための媒体と位置付けられている。
具体的に言えば、特定の分野(インフラ整備や福祉など)に財政支出を行うと、そこに労働力や設備が動員される。労働力も設備も社会においては有限だから、財政支出が行われた分野には、社会的資源が”政府によって”分配されたのだ。単に金銭が投入されたわけではない。
また、公害を引き起こすような好ましくない経済活動に重税を課すことで、そうした経済活動に社会的資源が投入されるのを抑制することもできる。これも、間接的な分配政策と言えるだろう。

こうした例を鑑みれば、財政支出や税制には、景気調節の役割だけでなく、社会的資源の分配という役割があると分かる。
そのため、景気を基準に財政支出の規模を大きく変動させると、必然的にそれらの中身を変質させ、社会的資源の分配という機能を損ねるのだ。
景気が変動しても、インフラや公共サービスが要らなくなるわけではないし、長期的かつ安定的に公共投資を行わないと、社会的資源≒供給能力そのものが失われてしまう。

したがって、好況と不況(インフレとデフレ)を、政策決定の第一の基準とするリフレーション政策は、財政政策の持つ社会的資源の分配という面を多かれ少なかれ軽視しており、現状への処方箋として不十分だと言える。
特に、長年の不況と緊縮財政によって供給能力が壊れつつある現在の日本は、単にデフレを脱却するだけでは再建できない。長期的な公共投資を行い、インフラ、科学技術、人材を回復させる必要があるだろう。