ガメラ35.最悪の底辺である西田泰宏はどうしてこんなにカッコいい哲学者なのか? 福本伸行【熱い三流】論。

自業自得…。

〜 35年のツケが回ってきた。

資金もない。

才覚もない。

 ただだらだらと年を重ねただけの人間。

そういう人間に世の中はスキマを与えてくれんのよ。

裂け目なんか見せてくれへん。〜

  ガメラこと西田泰宏は何もない人生に行き詰まりを感じて、アパートを引き払い、人生を一発逆転しようと企む。

 が、世間は厳しく貯金も尽きて、ホームレス生活を余儀なくされる。

 結局のところ、同じようなプータロたちとヤクザの組長に買われるが、とんでもないいざこざがあって、1からまたやり直すハメになる。

 が、この漫画はページを開く手を止める事ができない。

 とにかくカッコいいのだ。

 能力もないし、才覚もないし、知力もないのに、

 とにかくカッコいいのだ。

 というよりも、

ワクワクする。

 何か大きいピンチが来るわけでもないし、本当にダメダメなのだが、ここまで絶望を絶対的に自覚しているからこそ、ただホームレスをするだけでも泣き叫んでいるシーンでもとにかく生きているっていうのがヒリヒリする。

 例えば、またネタバレだが、最後の人生を賭けて、なけなしのお金を全額も宝くじへ当選する。すると、いつもの女子中学生に確率論で言ったら馬鹿じゃんと一蹴される。

 が、

 そんなこと

分かっているわい。

 こんな俺みたいになりたくなかったら、不良や弱者キャラなんかやっている場合か。

 こんなダメな俺だからこそ、もう宝くじしかないんよ…と冷たく言い放つ。

 すると、いつも近くを歩いているヤクザの1人がニッと微笑む。

 この敗北を認めているにも関わらず、生命のねじねるような顔、顔、顔。

 言っておくが、ガメラは、

 才能もないし、

 資金もない。

 しかし、

日常系漫画ですら、ない。

 とにかく、ダメな人間が落合陽一や東浩紀、宮台真司のようになろうとして

あまりに悲惨すぎる話なのだ。

 が、あまりにダメすぎるとんでもない顛末になるガメラの最後の表情は明るかった。

 〜

自分がちっぽけな存在に思えて

 たまらんかった。

これまでの人生は

大失敗のように思えて…

でも それはとんでもない考え違いだった…

どうしてか…わかるか…?

人が生きること…

人生ちゅうたら…それは

めちゃくちゃ個人的なもんやと

気がついたからや 

 急死に一生を迎えそうになったからか、彼の目は輝いていた。

 もちろん負けはしたくないし、負け自体はきっとずっと消えることはないだろう。

 が、こんなにも勝負に挑んだガメラの人生は、きっと35年間何も挑戦してこなかったからこそ、そこらへんの成功者よりもそこらへんの人気者よりも素晴らしい。

 そんなガメラが35歳で奮起しアパートを売り払いホームレスを体験し、今までの人生を全て捨てて立ち向かった体験はやっぱりの所、失敗すぎる結末だった。が、こんなに面白い話はないだろう。

 ひとつの道を己で選び、その道を全力を尽くして走り切った体験は、勝ち負けを超えて、他人すら超えて、

自分だけしか分からない

大切な体験になるはずだ。

 ガメラや最強伝説黒沢が凄いのは、何も才能もないし知性もないのに、とにかく読ませる凄みである。

 人生で一番大事なことは、勝ち負けや他人じゃない。

 いや、むしろ勝ち負けや他人から逃げないだからこそ、ガメラや最強伝説黒沢は、逆説的に勝ち負けや他人を超えた本当に大事な事を教えてくれる。

 宮台真司のようにたとえ利他性がなくても、落合陽一のようにたとえ才能がなくても、中野剛志のように日本を救おうと思わなくても、東浩紀のようにたとえ哲学の知性がなくても、

 自分の言葉と自分の頭で

戦った事が重要なのだ。

 勝敗や能力、他人の評価は関係ない。

 むしろ

自分の手足で本当に納得して動いたかどうかが重要なのだ。

生きろー。