アメリカの軍事介入は何故失敗するのか

アフガニスタンに駐留するアメリカ軍が、ついに正式な撤退を始めた。
アメリカは長年、対テロ戦争の一環としてアフガニスタンでタリバンと戦い、アフガニスタンの新政府を支援していたのだが、長期化(あるいは泥沼化)する戦争に終止符を打った形だ。

とはいえ、これはアメリカがアフガニスタンの再建に成功したから撤退するわけではない。むしろ、アメリカがこれ以上アフガニスタンに関わる気力と体力を失ったからこそ、撤退を決意したと言える。
アメリカほどの力を持つ国が、なぜアフガニスタンを再建できなかったのだろうか。

この問題に関しては、戦略学者エドワード・ルトワックの説がぴったりと当てはまるだろう。
ルトワックは、著書「戦争にチャンスを与えよ」の中で、地域紛争に国際社会が介入することの難しさを説いている。
地域紛争に国際社会が軍事介入した場合、敵国同士に余力が残ったまま中途半端な停戦が続き、根本的な終戦に至らない。介入するなら、何十年にもわたって軍を駐留させ、徹底的にコミットするべきだ。
これが、ルトワックの主張の要旨である。
この主張を裏付ける具体例などは、先述した著書を読んでもらえれば分かるが、世界各地の地域紛争が根本的な解決に至らず燻り続けいていることを鑑みれば、概ね間違っていない認識だと言える。

アフガニスタンの民主的な政府を盤石に出来なかったことは、アメリカにとって大きな失敗だが、過去にアメリカが参戦した戦争とその戦後処理と比較すれば、そもそもアフガニスタンを上手く再建するのは難しかったのかもしれない。
第二次世界大戦で、アメリカは日本とドイツに勝ち、両国を占領したが、それぞれの戦後処理を見ると両極端な成功例だったことが分かる。

日本の場合、アメリカは日本の統治機構をあまり壊さずに憲法改正へと持ち込んだ。
そもそも、大戦末期でさえ日本は内閣や議会が機能しており、間接統治を行う上では好都合だったのだ。したがって、アメリカは日本の再建において莫大なコストを払わずに済んだ。
日本とは対照的に、ドイツは中央政府の滅亡という形で終戦を迎えた。そして、米英仏ソの四カ国で分割占領したものの、冷戦の開始に伴って東西ドイツが成立した。
当時、ドイツはヨーロッパにおける冷戦の最前線であり、アメリカは西ドイツの再建と監視に非常に熱心であった。そのため、第一次世界大戦後のようにドイツが混乱し、危険な政権が誕生することは阻止された。

つまり、日本の場合であれドイツの場合であれ、アメリカは必要なコストを十分に払い、両国の再建を成し遂げたのだ。
しかし、アフガニスタンの場合は、そのコストを見誤ったと言えるだろう。ルトワックが言うような長期的なコミットをする覚悟も余力もなかったのだ。

したがって、現時点でアメリカ軍がアフガニスタンから撤退することは、ベトナム戦争の時のような「敗戦」であるとも言える。
今後、アメリカが従来のように世界中に軍隊を展開することは難しくなっていくと予想されるが、今回の撤退はその一例となるだろう。