【ロルフの書評】北朝鮮の核心 そのロジックと国際社会の課題:アンドレイ・ランコフ著

今回取り上げるのは、「北朝鮮の核心 そのロジックと国際社会の課題」という本だ。

著者のアンドレイ・ランコフは、ソ連生まれソ連育ちのロシア人で、北朝鮮の金日成総合大学に留学した経験を持つ研究者である。こうした経歴のおかげか、西側諸国の研究者や言論人とは異なる着眼点が豊富で、なかなか勉強になる一冊だった。

多くの人にとって、北朝鮮の体制は異常なものに見える。世界を見渡しても、あれほど抑圧的な国家は珍しい。民主主義の世界で生きる人々からすれば、なぜ暴動やクーデターが起きないのか不思議だろう。また、経済制裁が続く中でも核開発を止めない点も、我々からは非合理的に見える。
したがって、北朝鮮の指導層は狂人の集団だと思われがちだ。しかし、ランコフはこうした認識を否定する。彼は、北朝鮮という国の成り立ちを丁寧に解説しつつ、その行動原理を浮き彫りにしているのだ。

ランコフの理論そのものは、それほど複雑なものではない。ただし、中国と韓国の狭間に位置するという特殊な状況を踏まえなければ、彼が説明する北朝鮮の行動原理は、理解できないだろう。

この本は、北朝鮮を取り巻く国際関係だけでなく、北朝鮮の内政や経済についてもかなり詳しく書かれている。特に、金一族と朝鮮労働党が人民を統制する方法は、興味深い。北朝鮮の体制は、ソ連や東ドイツといった旧来の社会主義国とも大きく異なるのだ。そして、こうした内政における特殊性ゆえに、中国やベトナムのような経済自由化路線を採用しづらいということも分かり、経済発展と核放棄のトレードが非現実的であるという結論が導かれる。

こうした内容を説明すると、いかにも悲観的な内容の本だと思われるかもしれない。しかし、ランコフは単なる悲観論や現状分析を書いているわけではない。
北朝鮮の体制が、数十年単位では持続不可能であるとした上で、崩壊後にどうやって新しい秩序と社会を築くのかもランコフは十分に論じている。そこには、彼の真摯な姿勢が感じられ、普段は遅読の私でもページをめくるのが止まらないほどだった。本書は、北朝鮮情勢を学ぶ上で、必読の一冊だろう。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中