このふざけた時代に帝国憲法を読み直す③〜天皇と帝国議会〜

第1回
第2回

前項では、帝国憲法下での立法権について触れたが、そもそも帝国議会(当時の国会)の権限はどのようなものだったのだろうか。

まず、帝国憲法37条は、『凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス』と定めており、全ての法律は帝国議会での可決を必要としていた。帝国議会で可決された法案は、天皇の裁可によって正式に法律となり、効力を持つ。

この一連のプロセス自体は現在と変わらないが、伊藤博文は、議会が可決した法案に対し、天皇が裁可を拒否することも可能だと考えていた。しかし、実際のところ、天皇が帝国議会で可決された法案の裁可を拒否した事例は、存在しない。この理由はいくつか考えられるが、仮に天皇が気に入らない法案を無効にした場合、その責任は天皇個人に帰せられ、君主無答責の原則が形骸化してしまう。この事態を避けることは、憲法に基づく政治を維持していく上で重要であり、極めて妥当な判断だったと言える。

また、帝国憲法64条は『国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ』と定めており、法律の制定とともに予算の議決も帝国議会の重要な業務だった。とはいえ、これは全ての予算を対象にしていたわけではなかった。このことは、帝国憲法67条の規定が物語っている。

第67条 憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス

この規定によって、軍事費などの支出は政府の同意がなければ削減できないはずだった。しかし、実際には、各種予算を拡大するために政府が議会の協力を得ることが必要となったため、この条文は空文化していった。

こうして、帝国議会はそれなりの権限を持ち、当時の政府と対峙していった。

※「このふざけた時代に帝国憲法を読み直す④」へ続く

参考文献

伊藤博文・著, 宮沢俊義・校註『憲法義解』岩波書店, 2019年.
村瀬信一・著『帝国議会 〈戦前民主主義〉の五七年』講談社, 2015年.

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