このふざけた時代に帝国憲法を読み直す②〜立憲君主制の確立〜

第1回:https://chaosforest.net/2020/08/24/%e5%b8%9d%e5%9b%bd%e6%86%b2%e6%b3%95%e3%82%92%e8%aa%ad%e3%81%bf%e7%9b%b4%e3%81%99%e2%91%a0/…

帝国憲法は、1条から17条までの条文で、天皇が持つ複数の大権を定めていた。わかりやすく言えば、これらは4条で定められた「統治権」の具体的な中身だ。
しかし、大権は天皇は個人の意思で行使できるものではなく、「輔弼」や「協賛」を必要としていた。現代では聞き慣れない語句だが、

輔弼=「助言」

協賛=「同意」

と考えてもらえれば問題ない。
なぜこうした制約が必要なのかと言えば、それは「君主無答責」の原則を守るためである。

そもそも、君主が思い通りに政策を決める体制であれば、君主こそ政治の最高責任者になるし、民主主義など成り立たない。そのため、民主主義と君主制を両立させるためには、国家としての意思決定は議会や内閣に任せ、君主は直接的な責任を負わない(あるいは権限を持たない)ような仕組みが必要になる。これを、「君主無答責」と呼ぶ。

帝国憲法においては、3条が君主無答責の原則を示している。

第3条 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス

この条文は、天皇への不敬を禁じるものと思われがちだが、より本質的には君主無答責を規定した条文なのだ。帝国憲法の立案者の1人である伊藤博文は、著書「憲法義解」の中で以下のように述べている。

『故に君主は固より法律を敬重せざるべからず。而して法律は君主を責問するの力を有せず。独り不敬を以てその身体を干瀆すべからざるのみならず、併せて指斥言議の外に在る者とす。』(憲法義解, p25)

この記述からは、次の3つの要点が挙げられる。

・君主は、法律を尊重しなければならない

・法律は、君主に責任を負わせてはいけない

・君主は、政治的論争の外に存在する

これらのルールを守るために、天皇の持つ統治権が行使される際は、天皇とは別の意思決定機関や責任者が存在した。例えば、立法権は5条によって、以下のように規定された。

第5条 天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ

この条文を見ただけでは、「帝国議会は天皇に賛成するだけだった」と勘違いする人もいるかもしれないが、先述したように「協賛」を「同意」と置き換えれば、「天皇は帝国議会の同意を以って、立法権を行使する」という意味になり、法律を作るためには議会の賛成が不可欠であることが分かる。

※「このふざけた時代に帝国憲法を読み直す③」へ続く

参考文献

伊藤博文・著, 宮沢俊義・校註『憲法義解』岩波書店, 2019年.

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